内浦地区の港から歩いてすぐ、民宿や飲食店がいくつか立ち並ぶなかにあります。1階は「勝っちゃん」のお菓子屋さん。その建物の裏手にまわると「おむずびのいえ」の入り口が見つかります。
入口 |
車や観光客のよく通る道を一本奥に入ると民家が多くなり、島に住む人たちの生活がみられます。「おむすびのいえ」までの道のりはそんな日常が少し感じられるところです。オーナーの青柳花子さんはそんな島の日常やご近所さんとの触れ合いも感じてもらえれば、と言います。
花子さんは新潟市出身で2013年から粟島に住み、島の幼稚園へ勤務。その後クラウドファンディングなどで支援を募り、昨年9月に「ゲストハウス・おむすびのいえ」をオープンさせました。笑顔が印象的な花子さんはいつも島中の人から声をかけられていて、この島がすきで、地域の人ともきちんと関わっているということが伝わってきます。
お手伝いに来ていた河合将吾さんとオーナーの青柳花子さん |
1階のダイニングルームにはたくさんのサポーターの方の名前が |
昨年、まだ施工途中だった部屋をのぞかせてもらっていました。内装が綺麗になっていく過程は見ていたものの、実際に人が使ったからこそ出る、生活感や雰囲気が強く感じられました。すこし低めの天井も秘密基地へ来たかのようなワクワクを感じます。
2階からは港がよく見えます |
私が滞在した日は他にもお客さんが6名ほど。新潟県だけでなく東京からも来ている方が多いのも印象的でした。ほとんどの方が同年代ということもあり、自然と宿泊者同士が集まって夕方から外で一緒に飲んで話して、ゲストハウスに戻るというどこか家族のような時間でした。昨年の民宿アルバイトでの環境とはちがい、同年代の人たちと過ごす時間は新鮮で、なんだか不思議な感じです。
2日の島びらきイベント「粟島Bar」へ行ったあとはゲストハウスのみんなでもう一杯。なぜ粟島に来たのか、それぞれの仕事や趣味の話、島の好きなところなどたくさん話をした気がしますが、後半は記憶が曖昧に…。
お酒とつまみを囲んで、夜はまだまだ続きます |
旅がすきで粟島へ来るひと、ぱっと思い立って来た人、初めての方から粟島のリピーターまで。この空間にいるだけで自分が旅をしているかのように、知らない土地や人の話が聞けました。
そして、つぎの日の朝はみんなで朝食を。もらってきたというブリで、なめろうとお味噌汁を作ってくれました! 前日に島の子どもたちからもらってきた、あわしま牧場の卵で卵かけごはんも。思いがけず、ゲストハウスでこんなに贅沢なご飯が食べられて驚きでした…!
みんなで朝食 |
そして今回宿泊で一緒になった方をすこし紹介します。
棚井さん |
1人目は棚井晴奈さん。現在、東京に住む棚井さんは、粟島には今回で3回目だそう。昨年の夏頃に初めてひとり旅をして、泊まった先が「汐見の家」という愛媛県の離島にあるゲストハウス。そこでの宿泊をきっかけに他の離島にあるゲストハウスに興味をもち、探していたところ「おむすびのいえ」の存在をネットで知ったといいます。
東京では仕事に追われる日々のなか、こうして粟島にきてのんびりできることが棚井さんにとってリフレッシュできる時間だと言います。また、粟島で知り合った人をきっかけに現在のお仕事に繋がっているそう。
「すれちがう人とあいさつをしたり、島で採れた食材を食べたりと、ここでの生活は人として自然な生活なんだと思います」と笑顔で話してくれたことがとても印象的でした。
トムさん |
2人目はThomas Grathwol(トム)さん。
トムさんはアメリカのミネソタ州出身。5年前からALTの仕事で新潟に住み始めたそうです。現在は英会話スクールを経営し、その傍らバンド活動も行っています。バンド『RAPTOR』(Official Site : http://raptorjp.com/ )ではドラムを担当。トムさん1人でも音楽活動を行っているそうです!
新潟に来たのは5年前。地図を広げて地名や山や川などの名前を覚えていたときに粟島という島があることを知り、いつか行ってみたいと思っていたそうです。「粟島では、漁師さんと港で一緒にお酒をのんだことがすごく楽しかった」といいます。島びらきイベント後には、港でゲストハウス宿泊者と地元の方とで、すでに飲み会が開かれていました。
地元の方たちと港で缶ビール |
またこの時期に粟島に来た理由を尋ねると、「朝起きたとき、粟島に行こう! と思ったから」と話してくれました。トムさんとお話する時間は多くありませんでしたが、自身で音楽を作られたり、心で感じたことや思ったことを素直に体現している方なのだろうな、と感じました。
現在、テレビや雑誌で「移住」や「離島」という言葉をよく目にするようになりました。若者が地方や離島に移住することが注目されつつありますが、そこに来る理由としては、誰もが豊かな自然や人との関わりをもった生活に魅力を感じるようになったからなのかもしれません。
オーナーである花子さんは新潟県出身で、粟島への移住者でもあります。
「粟島へは“移住”というより“引っ越し”という感覚。“移住”という大げさな感じではなく、ただ自分が好きな場所に住んでいると思っているよ」と話してくれました。もちろん島で一からのゲストハウスづくりの大変さはあるものの、あくまでも自分が好きな場所で好きなことをしている、といいます。
私自身の意識では粟島を遠く感じていましたが、花子さんの話をきいて距離を近く感じるようになりました。情報だけでなく、その地域に足を運ぶことで本当に感じられることがあり、それがいつの間にか自分の生活に染み込んでいくのでしょう。