2017年9月22日金曜日

本の紹介とイベント案内|成宮アイコ『あなたとわたしのドキュメンタリー』発売

あなたとわたしのドキュメンタリー

新潟出身の朗読詩人・成宮アイコちゃんの自伝エッセイ集『あなたとわたしのドキュメンタリー』が出版されました。発行は福岡市の書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)さん。

教室の流行にも、社会の常識にも、同世代の当たり前にもどうにもこうにも馴染めずに心と身体が引き裂かれ、「死にたい」「死のう」と思い続ける日々の中、その一歩手前、すんでのところで紡がれた言葉の数々がエッセイとしてまとめられています。

暴力と罵倒の家庭生活、だれひとりの友人もいない学校生活の中、自己肯定感を磨り減らして過ごした青春時代のこと。NAMARAの江口歩さんに声をかけられて出かけた「金曜朗読ショー」で衝撃の出会いとなった月乃光司さんのこと。自分の中にある〈生きづらさ〉を認め、さらけ出し、ともに笑い合えるという奇跡のバトンを受け取ったこと。

そして、アイコちゃん自身も書きためていた詩の朗読をはじめたきっかけが書かれています。客の顔を見ることすら、ステージに立つことすら出来なかったライブから、徐々に、徐々に、受け取ったバトンを次に繋ごうと、客席のひとりひとりに視線を合わせ、全力で言葉を発するいまのライブのスタイルが出来上がっていった過程を知ることができます。

アイコちゃんのライブは2回見に行ったことがありますが、客席にはやはりひきこもりやうつ病など様々な〈生きづらさ〉を抱えた(と思われる)人が多く来ていました。そこで客席に向かって自作の詩をギターの伴奏に合わせて叫ぶ姿がありました。

「あぁ、その生きづらさわかるよ」「それでもいいじゃないか、死ぬな」

家族や友人、医療や行政などに頼ることもできない人の「最後のセーフティネットになりたい」とアイコちゃんがどこかに書いていましたが、たしかにこの朗読ライブに救われ、目標にして生きている人がいる、そんな気がしました。言葉によって散々、傷つけられ、言葉によって救われてきたアイコちゃんだからこそ響くものがあるんだと思います。

そして、本の出版を記念してライブイベントがあります。こちらにわたしも呼んでもらいました。

10・21@北書店

2017年10月21日(土)19:00開演、会場は北書店さんです。

イベントは3部構成。第1部の「新潟を愛する100の方法」にアイコちゃん、北書店の佐藤さんとともに登壇予定です。「新潟から逃げた成宮アイコが、新潟で本屋さんを営む佐藤さん、新潟で出版社を作り雑誌を発行する小林さんに、「故郷」との落とし前のつけかたを学ぶ。新潟ってどう愛したらいいんですか?」というお題です。

北書店の佐藤さんはアイコちゃんが(今では)大好きな人。かつては、なぜこの人はこんなにもぶっきらぼうなのに、これほどいろんな人に愛されているのだろう、羨ましい、嫉妬する、それがこじれてむしろ憎い、と思っていたそうです。わたしへは『Life-mag.』という雑誌作りを通じてカウンター行動をやってるのに共感して、と依頼をいただきました。

新潟をどう愛したらいいか、難しいテーマですね。

純粋無垢に「ニイガタLOVE、地元大好きっ!」と思ってるわけではないので。

この問いはたぶん、新刊にあったこの一節の言い換えでもあるのではないでしょうか。雨宮処凛さんとアイコちゃんの対談の中で、お互いのライブ活動についてこう話しています。

雨宮 そう言われちゃうのすごくわかる。わたしもあの頃、全然生きづらかったな...。生きづらくなかったら、たぶんあんなことやんないよね。本当に大丈夫だったら、リゾート行ったりバーベキューやったりしている気がする」

生きづらくなかったら、〈一人で新刊書店〉やんないよね?

生きづらくなかったら、〈一人で雑誌社〉やんないよね?

そこんところの葛藤とやり甲斐、どうバランスとってやっての? 教えて。ということかなと思いました。

いや、

まだ打ち合わせしてないから、わかんないけど。

アイコちゃんとは2015年9月にインタビューさせてもらってからのご縁。同い年なので、気楽に参加できたらと思います。

詳細・予約は、http://aico-narumiya.info/schedule/ へ。
近くなってくるとツイッターでも情報が発信されると思います、https://twitter.com/aico_narumiya

2017年9月11日月曜日

Niigata Liberal Arts Club、雉や、新潟絵屋

9月11日、今朝は新宿への個人注文分1部の発送から作業を始めました。都会の真ん中でLife-mag.がどんな風に読まれるのだろうとあれこれ想像しながら梱包して発送してきました。

さて先週末、9月9日新潟の町場に出てすこし回って来たので備忘録としてブログでも紹介したいと思います。

「教養を身につけて広い思考で仕事やプライベートをより充実させよう」というテーマのもとで開催されている「Niigata Liberal Arts Club」さんの講座に出てきました。20〜30代の社会人有志が主宰するだれでも参加できる社会人ゼミです。

先生も美魔女のよう

会場は万代市民会館

新潟大学職員で友人の高澤さんが幹事のひとりを務めていて、案内をいただきました。(昨年度の新大講義では授業前にアドバイスをもらっていました)。今回は11回目で、だいぶ前、、、初回の頃から声をかけてもらっていたのですが、ようやく出席できました。付き合いの悪さが露呈しますね、遅過ぎ。

この講座では毎回、新潟大学の教授や准教授が講師として迎えられ、その先生の専門領域について一般向けの講義を聴くことができます。今回の講師は新潟大学教育学部准教授の小林繁子さんでした。

中高時代はいわゆる「オカルト少女」、愛読書は澁澤龍彦。古本屋で『魔女狩りと悪魔学』という運命の1冊に出会い、「魔女」研究の道に進んだそうです。

講座テーマは「近世ドイツで行われた魔女裁判について」です。

魔女とは悪魔と契約を結んだ者、悪魔と情人(性的)関係がある者、魔女集会(サバド)に参加している者、天候を操る、飛べる、などの魔術を使える者を差します。16〜17世紀の神聖ローマ帝国(ドイツ)を中心に欧州で4〜6万人の魔女が告発、処刑されたそうです。

キリスト教の信仰に出てくる悪魔から派生した魔女について。魔女は裁判で裁かれ、拷問などの処刑を受けたこと。また活版印刷の発明、印刷物の流布が魔女イメージを広げたこと。20世紀にはナチスドイツの人種主義にも魔女イメージが使われたこと、また現在のドイツ右翼政党もその思想を引き継いでいることなどの指摘がありました。

講義時間は1時間弱×3コマ、コマごとに10分の休憩という長丁場でしたが、駆け足の講義ではなく、先生の専門領域をちょっと突っ込んで知れ、知的好奇心を刺激するにはちょうど良い長さでした。参加していた社会人の方々は、いわゆる意識高い系になるんでしょうか。1コマごとに質問の時間が設けられると、次々と手があがりました。先生の講義が参加者の知的好奇心を刺激する名講義だったということもありますね。

ちなみに7月15日の第10回は、新潟大学理学部の松岡篤教授による地質学、古生物学。Life-mag.vol.001で取材させていただいた先生ということもあり、参加したかったのですが、都合がつかず断念。

他、過去の回では、同人文学部の福島治准教授による『自己愛的攻撃性を通してみる社会的紛争』、同人文学部の渡辺登教授による『問題解決の学としての社会学』、同人文学部の細田あや子教授『祈りの言葉とイメージの力 キリスト教美術の意味と機能について』などが開催されています。

次回、第12回は11月18日に同教育学部の伊野義博教授による『歌って何? 越後新潟の〈うた〉から学ぶ』が予定されています。Life-mag.vol.009の和納十五夜祭りの取材で「祭り囃子を採譜しにきた新大の先生がいる」と聞いていましたが、伊野先生かな。

講座は13:30からはじまって終わったのは17:00。その後、みなさんは毎回恒例の懇親会にくり出すとのことでしたが、わたしはそこまでは都合がつかず欠席。頭をほぐして、また知り合いを増やしていくという流れ。すごくいい流れですね。2月に呼んでいただいた亀田の福寿大学の若者バージョンのよう。

作業中の松本さん

講座の前の時間に、新潟絵屋で開催されていた京都の染色作家松本健宏さんの個展を見に行きました。前回の絵屋での個展から3年、その間に身内の死を経験し、生きるとはをふたたび考えながらの創作期間だったそう(展示会案内文より)。喜怒哀楽、様々な表情を見せる仏が描かれた小品群のタイトルは「人間」でした。絵屋の軒先で作業する松本さん。秋晴れの空の下、鮮やかな染物の色がよく映えていました。


雉やさん

お弁当

講座前にお昼にと向かったのは東中通の「雉や」さん。おだやかに身体にしみ入る味のお弁当でした。万代市民会館のオール前で学生に混ざってひとりで食べました。お昼のお弁当は580円で、他総菜も充実しています。近くを通った際はぜひのぞいてみてだくさい。雉やさんには【シネ・ウインド編】発行の際には長期間に渡ってポスター掲示に協力いただきました。

あらためてありがとうございました。