右・塩井さん |
先月の金沢取材でもう少し報告しておきたいことがあったので、ブログに書いておく。金沢のミニコミ誌「そらあるき」編集長、塩井増秧さんを訪ねた。
このご縁は「そらあるき」の新潟取扱店でもあるBar Book Boxさんの紹介だった。
質の高い写真と文章で編集されている「そらあるき」は金沢にとどまらず全国にファンが多い。ただの地元礼賛にならず、適度な距離感で、取材編集スタッフが直接取材し感じたことで綴られた記事が並ぶ。
実は3月の事前取材の時にも訪ねているので、お会いするのは2回目だった。この間、「そらあるき」も「LIFE-mag.」も渋谷ヒカリエの「d47 MUSEUM」で開催された「文化誌が街の意識を変える展」に出展。不思議な縁を感じた。
私は展示会に行くことはできなかったが、塩井さんからいろいろと話を聞くことができてよかった。三重県から出展の「kalas」がすごかったとか、など。
この時、聞いた編集エピソードをここにひとつ。「そらあるき」15号の編集を進めていく中で、志賀理江子さんの写真の反対ページが空くことに。他の特集記事などを持ってきてもどうもキマラナイ。
どうするか。志賀さんの写真に合うような文章を編集長である塩井さんが書くと宣言。
志賀さんの写真はここに掲載されているものも含め、シンプルな構図だが強度のある写真だ。「これに合う文章を書いてくれ」と言われたら、私は書ける自信がない。
そこを塩井さんは「俺が書く」と。「う〜、かっこいいっすね!」と私は何度も唸ってしまった。
当初から予定していたものをうまく組み合わせて誌面をつくったと思っていただけにこれはすごいなと思った。志賀さんの写真の隣に置いて、引き立て合える文章はなかなか書けないだろう。
「そらあるき」14号に「決める」という塩井さんのエッセイがある。塩井さんらしいなと思った一文をひとつ。
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この世の中は無数の決め事に満ちている。夜空に浮かぶ無数の星は綺麗だが、無数の小さな決め事がこの世界に張り巡らされているのを想像すると軽い嘔吐感を覚える。何故自分で決めずに「決め事」に従うのか、それはその方が簡単で楽だからだ。そこに考え抜いて闘う姿勢は全くなく、「決める」ことが他の人にとって都合の悪いことに触れたりぶつかったりするのを恐れているだけなのだ。
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言葉はきついが、無数の決め事と夜空の星々をくらべるロマンチックさがある。
また、「そらあるき」13号の特集記事を見て「金沢中央味食街」にも行った。地元の人でもなかなか入らなさそうなエリアだが、えいと入ってよかった。
と、ここまで書いてきて確認。塩井さんは18〜19世紀のイギリスアンティークを扱うお店フェルメールの経営者。取材、編集は本業ではないのである。
フェルメール |
「そらあるき」、金沢を歩くさいにはもちろん、行ったことがない人にもおすすめ。「金沢そらあるきマップ」「そらあるき SHOP DATA」もまちあるきの役に立ちます。
左・某紙記者Hさん |
また別の日、金沢勤務の某全国紙の記者さんと食事に行った。お店は主計町の「空海」。新潟勤務の頃に編集室に寄ってくれて知り合っていた方。
新聞という限られたスペースの記事にどれだけの背景や下調べが込められているのか、そのプロ意識を聞けておおいに刺激になった。「ほんとはもっと書きたい。削りたくない。それでも…、ということは何度もあったし、悔しい思いもしてきた」と語ってたとき、目頭を熱くしていた。
タクシーの運転手さんから聞いた話だけど、金沢の飲食店はなるべく電話してから行ったほうが気持ちよく迎えてくれるらしい。「これから行きます」でも「一人(とか二人)なんですけど」だったとしてもらしい。
能面体験 |
入口 |
空き時間にひとり、金沢能楽美術館へ。ひとつ前の企画「生きている老松/山本浩二」が見てみたかったが、会期終了後で残念。でも展示を見て、ちゃっかり能面も被らせてもらう。思っていたより視野は狭いし、呼吸もしづらかった。顔をふさがれ、これまで体験したことのないような圧迫感があった。