2017年3月12日日曜日

【新潟日報『おとなプラス』】柏崎市高柳の「鳥追い」、津南町秋山郷と『秋山記行』

鳥追い

引き続き、新潟日報社発行の『おとなプラス』に寄稿しています。

2017年1月18日(水)付けでは、柏崎市高柳町門出集落で行われている小正月の伝統行事「鳥追い」を取材しました。農作物を荒らす害鳥を追い払い、その年の豊作を祈る意味があります。

夜明け前から集落の大人や子どもたちが集まってきて、稲藁などを燃やした火を囲み、藁帽子をかぶり、拍子木を鳴らして「鳥追い歌」を歌います。前日から集落の人たちと一緒に茅葺き屋根の古民家に泊まり込んで、取材させていただきました。

囲炉裏端での談笑

「宝引(ほうびき)」という正月の遊びの様子

藁帽子と炎

鳥追い歌を歌う様子

休憩にカップ麺を食べるのが恒例

温かい飲み物などを用意してくれた集落のお母さんたち

この取材のご縁は、昨年8月に宮沙織さんから依頼いただいた仕事[][]にさかのぼります。荻ノ島集落での研修後、ひとり門出集落を訪ねました。そして、門出総合農場の鈴木貴良さんに会い、集落のことや「門出・田代べとプロジェクト」のことなど話を聞かせてもらいました。

その時に「門出和紙の小林康生さんも面白いから、会いにまた来ればいいさ」と言っていたのが頭に残っていたのです。今回の取材にあたってもはじめは門出和紙を取材させてもらえないかと小林さんに電話しました。

すると「この時期に来るなら、鳥追いの取材がいいんじゃない」と逆に提案をいただき取材へとつながっていきました。お陰様で、山あいの農村集落・門出に、農民の祈りを込めて伝え継がれてきた「鳥追い」を取材することができました。

宮さんはじめ、いただいたご縁に感謝します。ありがとうございました。

鈴木牧之『秋山記行』と秋山郷

2017年2月16日(木)付けでは、鈴木牧之の『秋山記行』を参照しつつ、津南町秋山郷を歩いて寄稿しました。

牧之は越後塩沢(南魚沼市)の商人であり、文人でした。雪国越後の暮らしを書いた『北越雪譜』がよく知られています。この『秋山記行』は、江戸の人気戯作者・十返舎一九の勧めで書くことになったようです。

1828年、旧暦の9月8日〜14日までの7日間の旅です。新暦では10月中旬にあたり、すでに肌寒い季節でした。牧之はこの旅で秋山郷の地理や沿革、衣食住から信仰まで、民俗学の草分けと称されるほどの詳細な記録を『秋山記行』にまとめました。

わたしも牧之と同じように中津川沿いを上流に向かって進み、秋山郷最奥地、長野県栄村の切明まで行きました。ただし、牧之が訪ねた季節と違って真冬...。なかなか難易度が高かったです。雪の壁にバックミラーをぶつけてヒビが入りました。

たまたまですが、電話した民宿が牧之も泊まった家でした。これは運がよかった。現在、民宿「苗場荘」として営業している福原家です。母屋の梁は、当時のまま。

この日の宿泊客はわたしともう一人。横浜からきた太田知季さん。夕食時に話してみると同い年ということがわかり、お互いのことを話しながら過ごしました。紙面でもコメントを入れさせていただきました。

また夏場に行ってみたい土地です。

栄村入口

苗場神社

苗場荘で出してもらった餅キビ、餅米、麹を混ぜてつくった飴

母屋の梁

夕食で出た熊肉

炭火で焼いたイワナ

この取材のヒントは昨年末の粟島取材の帰り道にナンダロウさんからいただきました。岩船港から新潟市に帰るときの車中で、『おとなプラス』に寄稿していることをナンダロウさんに伝えると「牧之の『秋山記行』を辿って秋山郷に行くのとかいいんじゃない」と。

こうして書いてみるとわたしは独創的なアイデアの持ち主ではないですね。せいぜい良くいえば、縁あった人に指し示してもらった道を愚直に歩いている、といった感じかな...。

今月は旧巻町から、来月は糸魚川市から題材を見つけて歩く予定です。