かつて蒲原平野の農村風景を象徴するかのように田んぼのあぜ道に植えられていたはざ木。黄金色に実った稲穂は、刈り取り後はざ木に架けられ天日干しされていました。天然乾燥されたお米は独特の甘さがあったといいます。
しかし、はざ木のある風景も昭和40〜50年代にかけ、乾燥機の導入など農業の機械化が進み、姿を消していきました。いまも西蒲原では夏井地区(旧岩室村)など一部で保存され、四季折々の表情を見せてくれます。
昨日の早朝の朝靄なんか幻想的だっただろうなぁ。
そういえば、わたしも小学生の頃、祖父の田んぼに行くとはざ木があったような気がしますが、どうなったんだろうか、いつ倒されたんだろうか...。
田植えや稲刈りの手伝い、そして田植え後しばらくは田んぼの水を見て回るのによく祖父の軽トラに乗せてもらいました。祖父は飲み会がすくない人だったので、はやく帰ってきては田んぼか畑に出ていました。
田植え後から夏が来る前。田んぼに張られた水のせいか、風は冷たく感じられました。田んぼに映る空の色は、グレーがかった水色、漆黒が迫った赤色、一気に背を伸ばす苗の緑、天候や時間帯によっていつも違いました。
そうして連れて行ってもらったということ以外、なにを話したかは一言も覚えていませんが、そんな記憶が蘇ってきます。わたしは農作業やアウトドアはほとんどやりませんが、そんな原風景を(一応は...)持っています。
話を写真集に戻します。
今回の写真集は斉藤さんがはざ木のあった頃の西蒲原の農業の様子を撮影したものをまとめた一冊です。よくここまで歩き回り、時代を超えて撮影を継続してきたなと思わせる写真の数々です。
写真技術を凝らした作品集というよりは、郷土史的・民俗学的視点から撮られた資料集という意味もあるのかなと思います。A5判、133ページ、税込1,900円。
編集・デザインは巻の石田博道さん。今回もセンスが光っています。石田さん自身も長く写真をやっているそうで、角田浜の浜茶屋をテーマに撮りためてきた写真を前に見せてもらいましたが、すごくよかったです。いつか形になるのが楽しみです。
ちなみに今朝の新潟日報朝刊に記事が出ていました。
2018年5月3日付け新潟日報朝刊 |
新潟日報では販売店は「いわむろや」しか書かれていませんが、北書店(医学町通・新潟市中央区)でも取り扱いがあります。ほかの営業回りの予定もあったので、わたしの方で納品代行したのですが。
北書店入口はいってすぐ右のコーナー |
Life-mag.vol.010【西蒲原の農家 編】と一緒に読んでもイメージが膨らむかもしれません。右の『山熊田』、斉藤さんもすでに持ってました。
林哲夫展 |
ちなみに今日5月3日から27日まで林哲夫展です。はざ木ならぬ、「本のある風景」を愛する林さんの絵が、北書店に合わないわけがありません。ぜひどうぞ。
以下、余禄。
先日、斉藤さんに呼ばれて新潟市西蒲区福井にある「茶店 さとやま」に行った時の写真です。
斉藤さんの次なるテーマ「村のおばあちゃん」も撮影継続中とのことで、たまたまベンツで乗りつけた村のおばあちゃんを撮影している様子です。
おばあちゃんたちの愛車 |
撮影中の斉藤さん、レンズの向こうには村のおばあちゃんらの笑顔がありました |
さとやまの定食 |
斉藤さんから電話がかかってきたタイミングがあれで、この日2回目の昼食になりましたが美味しくいただきました。生姜味噌の焼きおにぎり、美味。
また、Life-mag.粟島編で寄稿いただく予定の新発田の原さんにも会え、近況報告をすこし。いろいろつっかえてばかりですが、1ミリずつ進めたいです。