「酔っぱらいたいわけじゃないんだよ。今日はちゃんと生きました、の『マル』をつけたいんですよね」(村井さん)
「酒飲みは、正直言って、時間は相当無駄にしているはずだけど、じゃあ世の中、すべて合理的であったらそれですべていいのかって」(伊藤さん)
などなど、よき酒飲みオヤジの話を隣の席に座ってそっと聞いているような読後感。分をわきまえた酒飲みであり、それぞれ本業で第一線で活躍されている方々だからこその説得力なんだろうな。これを自分が言っても説得力ないなー(笑)。
二〇一四年の暮れ、ふらりと訪ねた「新潟絵屋」さんの書籍コーナーでみつけて購読しました。新潟文化批評誌『風だるま』61号×にいがた文化マガジン『ばらくて』13号共同発行誌=『ばらだるま』第一号の一節です。
『ばらだるま』vol.1 |
これまでそれぞれに発行を重ねてきた二誌が合わさった合併号です。特集は「酒」を語る、です。
その1「全しょ連」座談会「しょっぺ店とは〝関係性〟だ!」
語り手:伊藤純一、野沢達雄、小川ひふみ、小川弘幸、村井勇、オブナイ秀一
第一部 せきとり本店で語る
第二部 新潟絵屋で語る
その2 吉川酒店店長インタビュー
「地酒防衛軍は〝J3〟の酒を応援します」
その3 大衆酒場ソクラテス店長インタビュー
「ソクラテスは〝リアル文化酒場〟だ」
酒エッセイ 一人酒の旅が好きだ 野沢達雄
以上が特集の内容で、他にも寄稿文や「酔談」など十六本ほど続いて、一〇〇頁超です。面白かったです。
私も創刊号の頃に訪ねて以来、お世話になっている駅前楽天地のソクラテスのこともあらためて知ることができました。ソクラテスの店名の由来は、旧・横越村(現・新潟市江南区)出身の小林存(ながろう)の歌、「われこそは街の酒場のソクラテス 君に与へんか毒杯も亦」からだったとのこと。北方文化博物館の近くの公民館の前の石碑を見てぞくっと、と。
個人的に一番面白かったのは、巻頭の対談での野沢さんの「全しょ連的なセンスでいうと、外れ・場末・辺境の地に行って、だれもお客が来ないような食堂で酒飲むのが、最近の私の趣味なんですよ。新潟駅周辺よりは、羽越線沿線とか、信越線の加茂駅前とか、越後線の吉田駅前とか」とのコメント。そんな「趣味」最高です。これ、俺もやりたい。
あと巻末の対談で、越智教授のお店セレクトもまた興味深かったです。LIFE-mag.編集室の斜め向かいの「千幅」も登場、またお隣の関屋地区「ごん助茶屋」、「丹波」なども。
「ごん助茶屋」に関しては、万代と古町と関屋に三軒あればそれでいいと、もう理想型に近いと激賞。これは近々、行きたい。編集室からも一駅、自転車でも十五分あればいくかな。
読みどころは他にもたくさんありますが、最後にもうひとつ。大倉宏さんの「偶然絶後」というコラム。「水と土の芸術祭2012」について書かれたものです。
ここで大倉さんは、大友良英・飴屋法水らによるインスタレーション「Smile」のことを書いています。「廃材」を使ってつくられたインスタレーションに、ある日、寝転がって解き放たれたもの、「休息」して感じたことについてです。
フォルダを見返したら撮影したのがありました。 |
こんなのや、 |
こういうのが点在してました。 |
今年、二〇一五年も第三回目となる「水と土の芸術祭2015」が七月十八日より開催(『ばらだるま』編集人の小川弘幸さんは総合プロデューサー)されます。招聘アーティストや市民プロジェクトも続々と決定しているようですが、大倉さんの言葉は、今回にもつながるヒントを持っているように感じました。
とにかく読みどころたくさんで、価格は五〇〇円(税込)。よき酒飲みオヤジの背中を感じられる雑誌です。新潟絵屋、北書店、英進堂、シネ・ウインド、吉川酒店(こんぴら通り)で販売しているとのこと。ぜひ。