先日、[巻]の斉藤文夫さんを訪ねると、斎藤純子さんの『消えた角海浜』という本を紹介してもらいました。(文夫さんの娘さんではないです。一応)
『消えた角海浜』 |
旧巻町にあった角海浜集落の歴史を松の老木に語らせて紹介する一冊です。能登からの移住者の話。美しい海岸にあった鳴き砂。毒消し売りの娘たちの暮らし。西蒲原や燕の農地干拓のため掘削された樋曽山隧道、その影響で村にあった染物屋も使っていた水が涸れたこと。東北電力の原発誘致計画が来たときの集落の反応。後半は、集落内の不倫の話も(!)。
斎藤さんは1950年生まれで、音楽関係の仕事を経て、庶民史の研究をされている方だそうです。2016年12月23日発行。税込800円。いまのところ、旧庄屋佐藤家と北書店に取り扱いがあるとのこと。
『うつろうもの のこるもの』(税込1,500円) |
また合わせて読むと面白いのがブリコールさんが今年8月に発行した『うつろうもの のこるもの』です。
写真家で郷土史家の斉藤文夫さんが昭和20年代から角海浜に通って、地域の人たちと交流しながら撮影したエピソードの聞き書き。映画『阿賀に生きる』の制作スタッフと、斉藤さんらを交えた「いろり座談会」(2014年4月27日)の書き起こしをまとめた本です。
わたしも座談会に参加させていただきましたが、得るものが大きく、さらに本にしてまとめて振り返れる、残して他の人にも伝えられるという、その一連の流れもいいなぁと思っていました。
ブリコールの桾沢さんご夫婦はわたしと同世代で、同じく新潟を拠点に本づくりをやっているということで、発行が自分ごとのように嬉しく、発売直後に5冊買いました。編集室を訪ねてくれた人に売ろうかなと思っていたんですが、「この人には読んでもらいたい!」と思う人にあげていたら無くなりました...。
昨晩、読み返していましたが、やはり読ませます。
P.70「つながりのあるお金」での大熊孝さんの指摘をあらためて確認できてよかったです。数百億円というお金が使われたが、排水機能以外になにも生み出さなかった大通川放水路と比較して、西川と新川の立体交差(1820年)という人口水路(=土木技術)は内野町(新潟市西区)の食文化、料亭、酒蔵など人の暮らしを創出したという箇所です。
すべての土木開発に「ノー」というわけではなく、人の暮らしや歴史や文化を踏まえた開発もあるのでは? という指摘かなと受け取りました。いつかLife-mag.【内野編】を狙ってもいるので、その種をもらいました。
また、P.72「問われているのは自分」での旗野秀人さんの発言も身に迫ります。
2017年のお正月におすすめの2冊です。