村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を年始に読みました。
相手を傷つけることによってしか前に進むことのできなかったある五人の若者の物語。
「人の心と人の心は調和だけで結びついているのではない。それはむしろ傷と傷によって深く結びついているのだ。痛みと痛みによって、脆さと脆さによって繋がっているのだ。悲痛な叫びを含まない静けさはなく、血を地面に流さない赦しははく、痛切な喪失を通り抜けない受容はない」(引用)
それぞれがそれぞれの役割を持って、調和していると思っていた仲良しグループ。ある日、突然、多崎つくるは拒絶されることになる。死ぬことしか考えられなかった時期を越え、十六年の歳月が流れた三十六歳の年。完璧に調和していると思っていたグループからなぜ、自分は拒絶されたのか。フィンランドの同級生を訪ねるまで続けられる。
文中に新潟県三条も出てきて「おっ」と思います。村上春樹の小説は数冊しか読んだことがありませんが、いつも物語による癒しの効果を感じます。痛みを伴ってもなお、生き、進む物語に背中を押されました。